メンテナンス作業で大活躍!
こんにちはchessinuです。
皆さんトルクレンチってご存知ですか?
車やバイクや自転車などを自分で整備するようになると、まず間違いなく必要になってくる工具の1つです。
自分のような「整備初心者」の人間にとっては、トルクレンチなんて名前を聞いただけで使用するのにハードルが高く感じてしまいますが、それは全く逆で、むしろ「整備初心者にとって必須の工具」になります。
というのも場数を踏んで整備に慣れているベテランであれば、「手や音の感覚」または「経験」である程度の判断はできるかもしれませんが、我々素人にはそんな経験も感覚も無いのでチンプンカンプン状態ですからね。
ということで今回は、トルクレンチの「使用方法」や「使用上の注意点」などをまとめてみましたのでぜひ参考にしてみてください!
トルクレンチとは?
まず始めに「トルクレンチとは何か?」について紹介します。
トルクレンチは簡単に言うと、メーカー側から指定されている「締め付けトルク値(N・m)」でボルトやナットを締める際に使用する測定工具って感じです。
ではなぜそんなことをする必要があるのかと言うと、適当な力の加減でボルトやナットを締めると、それが原因で「故障」や「事故」に繋がる恐れがあるからです。
例えば締めるのが緩すぎると振動などでボルトやナットが外れたり、また固く締め過ぎても破損に繋がったり…これが走行中のタイヤなどで起きたらと思うとゾッとしますよね。
なのでトルクレンチを使用することで、絶対とは言えませんが感覚締めで行うよりは確実にリスクを減らすことができます。
トルクレンチの種類
トルクレンチは大きく分けると、トルク目盛り部分を直接読み取りながら締め付け作業をする「直読式」と、あるトルク値に達するとクリック音や振動(ショック)で知らせてくれる「シグナル式」の2つに分けることができます。
そしてその2つの方式の中に「ダイヤル形,プレート形,スパナ形,単能形,プレセット形…etc」、本当に様々な種類(タイプ)の製品があります。
ちなみにこの記事で紹介するのは、タイトルにある通り「シグナル式プレセット形トルクレンチ」と呼ばれる、家庭用では一番オーソドックスなタイプのトルクレンチです。
このプレセット(プリセット)形は名前のとおり、「事前に目的の締め付けトルク値(N・m)にセッティング」して使用します。
そしてその指定したトルク値になると、「カッチン」と言ったようなクリック音と同時に軽いショックも手に伝わり教えてくれます。
仕組みについて
【KTC公式サイト】でプレセット形トルクレンチの、内部構造(仕組み)について分かりやすい図があったので参考にしてみてください。
またトルクレンチの内部構造を分かりやすく「丸見えにした状態」で使用している動画があるので、そちらも合わせて参考にしてみてください。
クリック音確認
一応クリック音がどんな感じなのか音声ファイルを上げてみました。
デジタル形トルクレンチ
そして他にも、液晶画面にトルク値が表示される「デジタル形トルクレンチ」なんて物もあります。
このデジタルタイプのトルクレンチは事前に目的のトルク値を設定せずに、液晶画面に表示されたリアルタイムのトルク値を確認しながら締め付け作業が行なえます。
また「プレセットモード(事前にトルク値を設定する)」への切り替えにも対応しており、指定したトルク値になると「光」や「音」で教えてくれます。
ということから、デジタル形トルクレンチは「直読式」と「シグナル式」の両方を兼ね備えているとも言えます。
ただこのようにデジタル形のトルクレンチは「高機能」ということもあり、基本的にアナログタイプのプレセット形よりも「高価」です。
まだ他にも色々な「形状」や「仕様」のトルクレンチがあるので、興味のある方はぜひ調べてみてください。
組み合わせ工具
トルクレンチに組み合わせて使用する工具を紹介します。
トルクレンチはヘッド部分に、そのボルトやナットのサイズに合わせた「ソケット」などを取り付けて使用します。
また通常のソケットでは届かない場所に対応するために、「トルクアダプター」や「エクステンションバー」という工具もあります。
これがトルクアダプターです。
装着するとこんな感じです。
これがエクステンションバーです。
装着するとこんな感じです。
他にも「ヘキサゴンソケット」や「ビットソケット」なども取り付けることができます。
このようにボルトやナットの規格に適合したソケットを取り付けることで、普通のボルト以外のトルクにも対応できるようになります。
トルクレンチの保管方法と使用上の注意点
保管方法について
意外と盲点なのが、プレセット形トルクレンチの「保管方法」についてです。
トルクレンチを使用した後にそのままの「トルク値設定の状態」で工具箱にしまうのは絶対にNGです。別に保管場所の工具箱が悪いというわけではなく、「使用したままのトルク値の状態」というのがマズイんです。
その状態で保管をしておくと、次回以降の使用でトルクレンチの「測定精度」が狂って寿命を縮めてしまう恐れがあるからです。
ではどの様にすればいいのかと言うと、そのトルクレンチの「最低トルク値」にセッティングした状態で保管をします。
例えば使用しているトルクレンチの測定範囲が「7~112N・m」であれば、「7N・m」にセッティングをして負荷の少ない状態で保管をしておきます。
ではなぜ最低トルク値で保管するのかというと、中に入っているバネ(スプリング)に対する負荷を「最小限」に抑える必要があるからです。最低トルク値以外で保管をしておくと、常にそのスプリングに対して負荷がかかり続けた状態となってしまいます。
まぁ基本的に販売メーカーから保管時のトルク値は指定されていたりするので、それに従って保管してください。
ちなみに理想的な保管場所は「湿度」と「振動」の少ない場所だそうです!
使用する上での注意点について
トルクレンチを使用する時の注意点を3つ紹介します。
- カッチンを2回以上行う
- トルクレンチの持ち方
- ボルトやナットを緩める作業
カッチンを2回以上行う
1つ目は「カッチンを2回以上やってはダメ」というのがあります。
どういうことかと言うと、トルクレンチを使用して締める時、事前にセッティングしておいたトルク値になると「カッチン」というクリック音で知らせてくれます。
でも本当に鳴ったかどうか心配になり、軽く戻してからまた締めると再度「カッチン」とクリック音がします。これはセッティングしたトルク値を超えて「オーバートルク」になってしまいます。
もし心配であれば、一度ラチェットレンチなどでボルトやナットを緩めてから、再度トルクレンチで締め直す必要があります。
トルクレンチの持ち方
2つ目はトルクレンチを使用して締める際は、「グリップ(ハンドル)の中央部分」を持って作業をするということです。
トルクレンチは「力点」、及び「有効長」や「力の大きさ」を計算して設計されており、一般的にその「力点はグリップの中央部分」です。
なのでグリップの端っこを持ったり
ヘッドに近い部分を持ったりして締めず、必ずグリップの中央部分を中心にして握るようにして作業をしてください。
ボルトやナットを緩める
3つ目は「トルクレンチを使用してボルトやナットを緩めてはいけない」ということです。
基本的にトルクレンチは「締める際」に使用する測定工具であり、「緩める」ことを想定して作られてはいません。
なのでトルクレンチでボルトやナットを緩めると、本体に必要以上の負荷がかかり精度や寿命に影響が生じてしまうので気をつけてください。
まとめ
- 最低トルク値にセッティングして保管をする
- 2回以上のクリック音はオーバートルクになるので厳禁
- グリップの中央部分を中心に持って締め作業をする
- トルクレンチでボルトやナットを緩めてはいけない
使用するトルクレンチの紹介
今回この記事で実際に使用するトルクレンチについての紹介をします。
- メーカー
- PWT
- 生産国
- 台湾
- 型番
- TW7112E
- 測定精度
- ±4%
- トルク測定範囲
- 7N・m~112N・m
- 差し込み角
- 3/8インチ(9.5mm)
- 全長
- 約367mm
- 重さ
- 約830g
- 材質
- スチール
補足事項
測定精度
「測定精度」というのは、そのトルク値に合わせてボルトなどを締めた結果の誤差(%)ということです。
例えばこの「TW7112E」では測定精度±4%となっているので、7N・mで測定した場合7×0.04=0.28ということで、測定誤差が「6.72~7.28 N・m」の範囲に収まるということです。
たしかこの製品には証明証などが付属していなかったと思うので、公表数値を全面的に信じるという形にはなりますが、まぁ人気のあるメーカーなので大丈夫でしょう!
差し込み角
また差し込み角についてなんですが、簡単に言うと「ソケットを取り付けるヘッド部分の大きさ」のことです。
これには大きさが色々とありますが、一般的に使用されているのは「1/4インチ(6.35mm)」、および「3/8インチ(9.5mm)」と「1/2インチ(12.7mm)」サイズです。
トルクレンチと差し込み角が違うソケットを持っている場合は、新しく買い直すか変換アダプターなどを使用することになります。
製品の特徴
この製品の最大の特徴は「安くてトルク測定範囲が広い!」という点です。
大手ECサイトで売られている同価格帯の製品では、「エマーソン」や「E-Value」などのトルクレンチがあります。しかしこれらのトルク測定範囲はそれぞれ「40~200N・m」や「20~110N・m」となっていて、自分が乗っているバイクに使用する場合にはトルクの下限値に少し不満があります。(上限値は60N・mぐらいあれば十分ですが)
例えばスーパーカブ(JA44)のオイルフィルターカバーボルトやドライブスプロケットボルトの締め付けトルクは「12N・m」と指定されており、またドライブチェーンが収納されているチェーンケースにおいては「7N・m」となっています。
ということで、「7~112N・m」まで対応しているPWT製品のトルクレンチがピンポイントで役に立つんですよね笑
測定範囲が低トルク~高トルクまでカバーされているので、何本もトルクレンチを購入せず、できるだけ1本で安く済ませたい方にとっては良い製品だと思います。特にバイクのメンテナンス作業をする方にオススメします。
ちなみにトルクレンチに限らずPWT製品を購入される方は、Amazonよりヤフーショッピングで購入するほうが安く買える可能性が高いです。
トルクレンチの使い方
それではPWT製のトルクレンチを用いて、実際の使用方法について紹介をしていきます。
こちらのトルクレンチは大きく分けると、以下の4つの部分で構成されています。
- ラチェットヘッド
- トルク目盛り(主目盛り)
- ハンドル(副目盛り)
- ロックリング(回転式スイッチ)
「ラチェットヘッド」の表側はソケットを取り付ける部分で、後ろ側には回転方向を設定するツマミがあります。
また「ハンドル」の上段部分には「副目盛り(0~6)」があります。
そして最低トルク値が7N・mで副目盛りが7つあるので、このトルクレンチの主目盛りは「7の倍数」となっています。(トルクレンチによって主&副目盛りの数字は異なります)
「トルク目盛り(主目盛り)」を見ながら「ハンドル(副目盛り)」を回してトルクの値をセッティングをした後、ボルトを締め付けます。<例 20N・m(主目盛り14N・m+副目盛り6N・m)>
「ロックリング」はトルク値をセッティングする前後で使用します。役割としては動かないようにロックしたり、動かす時にロックを解除する部分になります。
文章では少しわかりにくいかもしれませんが、実際にトルクレンチを触ってみればすぐに要領がつかめると思います。
実際にトルクレンチを使用してみる
使用手順
- ロックを解除する
- 目的のトルク値に調整する
- ロックをする
作業開始!
それでは実際にトルクレンチを使用していきます。今回はスーパーカブのエンジンオイル交換をする際の「エンジンオイルドレンボルト(締め付けトルク20N・m)」を例にして紹介します。
まずはトルクレンチの「ロックリング」を反時計回りに動かしてロックを解除します。
そして「ハンドル(副目盛り)」を回して、目的の締め付けトルク値「20N・m」にセッティングします。
まず「14N・m(主目盛り14N・m・副目盛り0N・m)」に合わせます。
そこからハンドルを回して副目盛りを「6N・m」動かします。
これで「14N・m+6N・m = 20N・m」となりました。
締め付けトルク値をセッティングしたら、「ロックリング」を時計回りに動かしてロック(固定)をします。
そして、手または他の工具(ラチェットレンチなど)である程度締めておいたエンジンオイルドレンボルトを、最後にトルクレンチを使用して締めます。
クリック音(締め付け完了音)はトルクレンチによってそれぞれ違うのですが、このトルクレンチだと「カッチン」みたいな音がします。まぁ音が多少聞こえづらい場合でも、手に軽いショックが伝わるので分かると思います。
事前に紹介したとおり、プリセット形のトルクレンチを保管する場合は必ず「最低トルク値」にセッティングしておきます。
つまりこのトルクレンチでは「7N・m」にセッティングをした状態で保管します。
終わりに
実際にトルクレンチを使用してメンテナンス作業などを行うと、やはり「安心感」や「満足感」が全然違いました。
自分で整備を始めた頃は一切トルクレンチを使用していませんでしたが、よくよく考えてみると結構恐ろしいことです…。
なんせ自分の適当な感覚で締めてただけですからね笑
それでは以上でトルクレンチの使用方法を紹介した記事は終わりとなります。
皆さんもぜひトルクレンチを使用して作業を行ってみてください!
さようなら~
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